公益財団法人 松竹大谷図書館

エントランス

クローバー概要

公益財団法人松竹大谷図書館は、松竹株式会社の創立者のひとり、大谷竹次郎(1877〜1969年)が昭和30年(1955年)に文化勲章を受章したのを記念して、昭和31年(1956年)12月26日に設立されました。長年にわたり演劇・映画の事業に携わってきた松竹株式会社が収集・所蔵してきた資料を広く一般に公開し、調査・研究も併せて行い、研究者や愛好家の利用に供して、社会文化の発展に寄与することを目的に、松竹株式会社の協力のもと1年半の準備期間を経て、演劇・映画の専門図書館として昭和33年(1958年)7月1日に開館しました。
平成23年(2011年)6月には、あらたに公益財団法人としてスタートし、関係資料の収集・整備を図るとともに、利便性の向上にも努めています。

◆ 施設概要

 閲覧スペース面積  44.014 ㎡
 書庫面積  274.567㎡(3階)・33.58㎡(地下書庫)
 収蔵能力  464連(3階)・54連(地下書庫)/棚数:約3,140段(冊子体資料:約70~90冊で棚1段)
 蔵書数  約460,000点

◆ 資料の閲覧方法

松竹大谷図書館所蔵の図書、雑誌、写真、演劇資料、映画資料は、カード目録と検索システム(パソコン)を使って検索できます。閉架式の図書館なので、資料はすべて閉架書庫に収められているため、直接書架に入り、閲覧することはできません。
以下、閲覧するための手順です。
①カード目録または検索システム(パソコン)で閲覧したい資料を検索する
②請求記号、著者、タイトルなどの必要事項を「資料請求票」に記入して、カウンターに提出する
③職員が書庫にある資料を出庫する
※閲覧は館内閲覧のみとなります。
※資料の貸し出しはしていません。
※映像資料(DVD・フィルム等)は所蔵していません。
※貴重書を閲覧する場合は身分証明書が必要です。
※ポスターなど一部閲覧に事前予約が必要な資料があります。

閲覧室(左)とカード目録(右)

閲覧室(左)とカード目録(右)

「男はつらいよ」をはじめ名作の台本を所蔵

「男はつらいよ」をはじめ名作の台本を所蔵


クローバーここもポイント!~大谷竹次郎とは?

松竹株式会社は白井松次郎、大谷竹次郎という双子の兄弟が、明治28年(1895年)に歌舞伎の興行に参加したことを創業とする120年以上の歴史を持つ演劇・映画の興行会社です。
竹次郎は明治38年(1905年)に兄・松次郎とともに大阪で松竹合名会社を設立。のちに東京進出を果たし、大正3年(1914年)に歌舞伎座の社長に就任。大正9年(1920年)には松竹キネマ合名会社を設立し、映画事業にも着手し、数々の名作を世に送り出し、昭和12年(1937年)に松竹株式会社が設立されると、その社長に就任しました(兄・松次郎は会長)。
大谷竹次郎が、その功によって文化勲章を受章したのは昭和30年(1955年)のことでした。竹次郎は松竹と竹次郎個人が所蔵する膨大な資料を、ひとつの会社または個人が所有するのではなく、1カ所に集めて管理し、散逸を防止し、一般に公開して社会のために役立てようと考えました。
当時、このような専門図書館は早稲田大学の演劇博物館のみでした。一企業が社内の利用に限定せず、一般に開放された演劇・映画の専門図書館をつくるというのは珍しく、愛好家や俳優たち、ほかの興行関係者たちにも利用してもらおうと設立を計画した、その考えは画期的だったといえます。
昭和31年(1956年)12月に文化勲章の年金を資金として「大谷」の名を冠した演劇・映画に関する専門図書館「財団法人松竹大谷図書館」を設立。1年半の準備期間を経て、昭和33年(1958年)7月1日に旧松竹会館の9階に開館しました。

クローバーここもポイント!~ユニークなミニ展示

演劇・映画に関して膨大な資料を所蔵する松竹大谷図書館ですが、その一端を覗かせるのが閲覧室のミニ展示です。8月15日までは「時代劇スター 萬屋錦之介」展を実施。今年没後20年となる時代劇スター・萬屋錦之介に関する貴重な資料を展示しました。昭和7年(1932年)11月20日、名女形三代目中村時蔵の四男として生まれた萬屋錦之介は、昭和28年(1953年)に歌舞伎界から映画俳優に転身し、その美少年ぶりから“錦ちゃんブーム”を巻き起こしました。平成9年(1997年)に64歳で逝去しましたが、長年にわたり日本映画の屋台骨を担ってきた萬屋錦之介に関する多彩な資料を展示し、好評を得ました。
ミニ展示は8月30日からは今年150年となる「大政奉還」をテーマにしたものが展示されています。

「時代劇スター 萬屋錦之介」展

「時代劇スター 萬屋錦之介」展

クローバーここもポイント!~中央区の「まちかど展示館」として

松竹大谷図書館のある中央区は江戸開府以来400年もの間、歴史と伝統を重ね、国内外のブランド店や老舗が集まる日本有数の繁華街・銀座、東京の台所として人で賑わう築地魚河岸、下町情緒にあふれる月島などがあり、日本文化の発信地としても注目されています。
中央区では地域に伝わる地域の文化資源を「まちかど展示館」として整備しています。その施設は銀座・京橋エリアに松竹大谷図書館、江戸ほうき展示館、足袋の博物館、ミズノプリンティングミュージアム、のれん・提灯・下絵の展示館、月島エリアに佃まちかど展示館、石川島資料館、勝どき・豊海歴史資料展示館、ふるさと晴海資料展示館、そして日本橋エリアに楊枝資料館、Daiichi Sankyoくすりミュージアム、小津史料館、伊場仙浮世絵ミュージアム、小伝馬町牢屋敷展示館、江戸屋所蔵刷毛ブラシ展示館、ゆかた博物館、箱崎町箱四町会神輿庫、染物展示館・虎の檻、江戸表具展示館、三菱倉庫・江戸橋歴史展示ギャラリー、聚玉文庫ギャラリー、兜町・茅場町まちかど展示館があります。各所を結んでオリジナルのお散歩コースを考えることもできます。
今年の夏(7月20日〜8月31日)は「夏休みスタンプラリー」を実施。松竹大谷図書館では「男はつらいよ」の特製スタンプを設置し、イベントを盛り上げました。
中央区まちかど展示館⇒http://chuoku-machikadotenjikan.jp/

松竹大谷図書館のスタンプ。※「夏休みスタンプラリー」期間終了後も、スタンプは通年で設置

クローバーここもポイント!~運営費の不足を補うためのプロジェクト

公立図書館ではない松竹大谷図書館は収益事業からの収入が乏しく、開館当初から資金面で大きな課題を抱えてきました。そこで2012年(平成24年)から昨年まで5回にわたり、運営費の不足を補うための“クラウドファンディングプロジェクト”に取り組んできました。
これまで「歌舞伎や『寅さん』、大切な日本の文化の宝箱を守る。」「【第2弾】歌舞伎や映画、大切な日本の文化を次世代に残す。」「【第3弾】日本文化の宝・歌舞伎や映画の記憶を未来につなぐ。」「【第4弾】歌舞伎や映画、日本文化の歴史を後世に伝える。」「【第5弾】舞伎や映画、鮮やかな日本文化の遺産を守り復元する。」をテーマに「Readyfor」で実行し、いずれも目標金額を達成し、これまでに累計で1,500万円の資金調達に成功しています。
9月5日からは6回目となる「【第6弾】歌舞伎や映画、銀幕が伝えた記憶を宝箱で守る。」プロジェクトを開始。今回は電動書架の修理費とともに、松竹大谷図書館が所蔵する「映画スクラップ」を保護するための資金を集めるプロジェクトです。「映画スクラップ」は松竹大谷図書館が所蔵する約4,000冊の映画作品のスクラップ帳のこと。特に経年劣化が深刻化している昭和20年代のスクラップを専用のアーカイバル容器(保存箱)を作り、これ以上破損が進まないようにしようというプロジェクトです。
詳細⇒https://readyfor.jp/projects/ootanitoshokan6
※クラウドファンディング:不特定多数の人が通常インターネット経由でほかの人々や組織に財源の提供や協力などを行うこと。


クローバー図書館からのメッセージ

司書さん公益財団法人 松竹大谷図書館 主任司書
武藤祥子さん

本館の最大の特徴は市販されていない生の資料が多いということです。演劇にしろ映画にしろ、筋書や台本のように作品の製作段階で作られたものを所蔵しています。また、ポスターやロビーカード、スチール写真など宣伝用のツールも多数所蔵していますが、これは日本における50〜60年代の映画全盛期を象徴する貴重な資料といえるでしょう。
かつてはプロの製作者が次の企画のために当館を利用されるケースが多かったのですが、現在は幅広い世代、職種の方にも利用していただいています。学生さんが学園祭の催しのための参考資料を探して来館される場合もありますし、リタイアされた方が映画のロケ地めぐりの下調べのために訪れたり、演劇の世界にいらしたご先祖様のルーツを求めて来館される方もいました。開架式ではありませんので、直に書架にある資料を見ることはできません。それだけに当館の司書はいかに来館者の目的に沿ったお手伝いができるかを課題にしています。来館者とともに目的の資料を探し出すことをモットーとしていますので、なんでも相談していただきたいです。レファレンスサービスを充実させていきたいと思っています。


クローバーEDITORIAL NOTE 松竹らしい“遊び心”

図書館といえば広い閲覧スペースをイメージされる方が多いだろう。そういう意味では松竹大谷図書館の第一印象は物足りなさを感じるかもしれない。しかし、広さと深さは異なる。松竹大谷図書館は“深い図書館”なのである。
その大きな理由が膨大な数の台本やプレスシートなどの「市販されていない生の資料」を所蔵していることだ。非公開ではあるが約300年前の絵草子「かふきのさうし」も所蔵。その資料数は実に46万点に及ぶ。
バックヤード(閉架書庫)を特別に見学させてもらったが、書名、件名、著者など詳細な分類で整然と資料は収められていた。個人的に感銘したのは往時の名作のポスターやスチール写真、ロビーカードであった。いわゆる“昭和の映画館”にはショーウィンドーには上映中、または次回上映する映画の宣伝ツールが展示されていたが、そのときのものが、保存されているのだ。それを目の当たりにすると、まさにタイムスリップ!
貴重な資料を所蔵する図書館らしく閲覧室も静謐な空気を漂わせているが、そんな中で異質なものとして目をひいたのが、カード目録の棚の上に飾ってある芝居絵ペーパークラフトだった。歌舞伎役者と舞台装置が描かれた浮世絵の復刻版から各パーツを切り出し、それを組み立てると歌舞伎の名場面が再現されるというものだ。静謐な空気の中におどる、小さなカラフルな世界。娯楽でも秀でる松竹らしい“遊び心”をうかがわせる。(上原由迩)

芝居絵ペーパークラフト「一谷嫩軍記 組討」。館内でも販売している

芝居絵ペーパークラフト「一谷嫩軍記 組討」。館内でも販売している


ビル公益財団法人 松竹大谷図書館

利用案内
開館時間:10:00〜17:00
休館日:土・日曜、祝祭日、毎月最終木曜日、5/1、11/22、年末年始、春期・夏期特別整理期間

アクセス
住所:〒104-0045 東京都中央区築地1-13-1 銀座松竹スクエア3階
電話:03-5550-1694
ホームページ:http://www.shochiku.co.jp/shochiku-otani-toshokan/
フェイスブック:http://www.facebook.com/shochikuotanitoshokan/